町工場の会社案内パンフレットを作りました。〜信和産業様〜

みなさん「フィルムのスリット加工」と言われて
どのようなことを想像しますか?
フィルムを生産しているわけではありません。
フィルムに何か特殊な色を付けたりするわけでもありません。
簡単に言うと、フィルムをカットする作業です。
詳しく言うと、フィルムのロール(「原反」と言います)を
スリット機という機械を通して幅の異なるロールに分割する作業です。
フィルムのカットには、もう一つ、「断裁加工」というものもあり、
それは文字通り、ロール状のフィルムを断裁して、
シート状の大きさに変えるという作業です。

<参考図>

僕は、先日初めてこのような仕事があることを知りました。
「株式会社信和産業」というフィルム加工会社の、会社案内を制作する機会をいただいたのです。

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電車に乗って、さらにバスに揺られて、ごとごと。
打ち合わせのために現地へ行くと、何やら大きな建物があって、
中に入ると透明なフィルムのロールがぐるぐる回っている機械が何台もあって、
職人の方々がマスクをしてじっとフィルムを眺めている。
たまに機械を操作したり、フィルムのロールを入れ替えたりする。
その合間合間に、フィルムがキラキラと光っている。

「・・・ぜ、ぜんぜん知らない世界だ!」というソワソワ感で、なんだかじっとしていられない。
職人の方々は余裕も漂っているけど、場は張り詰めた緊張感に満ちている。
そんなわけで、ソワソワしながらも、なんとなく動けないので曖昧な姿勢になる。
いわゆる町工場の雰囲気です。想像つきますよね?かっこいいです。

建物の半分以上を占めるものすごく大きな倉庫の棚には、
様々な有名企業の名前の入った製品が、端から端までずらっと並んでいる。

こんな会社のパンフレットを作る、、、どうしたらよいのやら。
と、思いながら、とりあえず身体に情報と印象をインプットし続ける。
このインプットが、デザインの仕事ではとても大事で、
ここの段階では、ただひたすら受け止め続けるようにします。

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打ち合わせでは、現場の方に加えて、社長さんや営業や事務の方もいらっしゃって、
どのような事にパンフレットを使われるのか、
どういうことを伝えたいのかを丁寧に教えていただきました。
印象的だったのが、「社員の育成を大事にしている」ことを伝えいたいとおっしゃられたことです。
以前その会社が制作していたパンフレットは、
所有している機械を紹介するもので技術力をアピールしていました。
だから、打ち合わせするまでは、なんとなくハイスペックな感じを伝えたいのかな?と思っていました。
ところが、打ち合わせを終えて僕の中にあったのは、
社員を大事にしながら、地道に、けれども確実に仕事をしている、という柔らかなイメージでした。

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今回、デザインをし直すに当たって、僕は2つの事を提案させていただきました。
ひとつは、業務内容をもっと分かりやすく伝えること。
もうひとつは、社員育成に力を入れていることをを伝えること。

信和産業様は、職業柄、あまり一般の方に営業することはなく、
フィルムのメーカーさんなどに営業することが大半です。
ですから、ある程度はフィルム加工のことをわかっている方が相手です。
それでもやはり、どのような特徴がある会社なのかを伝える必要は大いにあります。
「スリット加工」と「断裁加工」ができること、「クリーンルーム」や「大きな倉庫」があること、独自に運搬もやっていること。
そのようなことがビジュアル的にぱっとわかり、営業さんがパンフレットを手に、お客さまに信和産業様の業務内容や機械の紹介を簡潔に説明できること。
それを成り立たせるために、工場全体のマップのイラストを入れることにしました。

もうひとつの、社員育成に力を入れているということについては、
キャッチコピーに、その思いを入れさせていただきました。
社員の方からアイディアをいただいて、こちらで少し手直しをしました。
できあがったコピーは「お客様と共に。これまでも、これからも。」というもので、
一見社員育成感はないのですが、「共に」という言葉、「これまでも」という言葉は、
つながりを大切にする会社ならではの雰囲気が伝わると思います。
技術を前面に押し出すのではなく、人間を前に出しているコピーです。

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また、今回は、写真撮影も行いました。
カメラマンの方とぐるぐると工場内を撮影して回りました。
気をつけたのは、フィルムのキラキラ感や動き、つまり、職人の方の見ている風景を閉じこめることです。
通常、会社案内だと、もう少し引いた説明的な写真が多くなるのですが、
信和産業様のことを伝えるのに、かっちりし過ぎる雰囲気はいらないと思いました。
全体的なトーンも、明るめに、優しい雰囲気に仕上げました。
デザインする際に、使う色合いなども、そういう雰囲気とそろえることにしました。
印刷する紙は、フィルムに通じるようなピカピカする紙も良いのですが、
ここはしっとりと柔らかい雰囲気の方を大切にしました。

ラフを出して何度か修正のやりとりをさせていただいて、
だいたい2ヶ月くらいで印刷納品しました。

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そんなわけでできあがった会社案内がこちらです。
信和産業の皆様、取材などのご協力ありがとうございました。

<信和産業様会社サイト>
http://www.shinwasangyo.jp/
こちらのサイトでご使用いただいているシンボルマークも弊社で作成しました。
「S」とフィルムのロールをデザインしました。

<弊社のデザイン実績はこちらから>
http://www.hoocica.net/works